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ウォーターパールの仕組み

はじめに

中学生の科学実験教室:いろんな試行錯誤」を見て、ウォーターパールなど光とタイミングに関する実験器具に関する質問がきたので、この機会に原理などをまとめておきます。このページにも書いていますが、我々が使う装置は以下の本を参考に作ったものです。
いきいき物理わくわく実験〈1〉
愛知物理サークル, 岐阜物理サークル
日本評論社(2002/03/01)

 

ウォーターパールの仕組み

まず、ウォーターパールとはどういうものか、中学生の科学実験教室の時に撮影したビデオで説明します。左上に見えるホースから水が流れ落ちています。振動のために、ホースが揺れて、水がカーブを描いています。部屋は暗くしてあるのですが、奥にいる学生さんが持っている光源(高速で点滅するマルチストロボ)の光で水が見えています。ストロボが点滅する間隔を変えることで、途中で水が止まって見えて、さらに、間隔を変えることで上に昇っているように見えます。
 
なぜ、このように見えるのでしょうか。これを理解するために、まずは装置の説明をしましょう。使っている装置よりも理解しやすいので、YouTubeの動画("Amazing Water & Sound Experiment #2")の装置で説明します。
 
水道につないだホースをスピーカーにくっつけて、スピーカーの振動をホースに与えています。水道の脇のツマミをまわして、スピーカーから出す音(正弦波(sine curve))の周波数(波が振動する速さ)を調整しています。1:30あたりのホースの動きを見ると、ホースが振動していて、これが正弦波の形になっていることが分かります。この動画は昼間の外で撮影されており、フラッシュは使っていませんが、フラッシュに相当するのは動画のカメラです。動画のカメラはあるタイミングで飛び飛びに静止画を撮っていると考えることができますが、これは暗い所でフラッシュがついた時だけ見えることと対応しています。動画のタイミングはフレームレートと呼ばれ、この画像では24のようです。これは、正弦波の周波数が24Hzで静止して見え、その後、23Hzで逆方向、25Hzで順方向に見えるためです。
 
次に、このような装置で、なぜ止まったり、水が昇ったりして見えるのか説明します。まずは、水が止まって見える場合です。簡単のため、1秒に1滴ずつの水滴が落ちているとしましょう。スピーカーの周波数が1Hzということです。これを暗いところで、フラッシュをたいて見ます。このフラッシュをたくタイミングを1Hz、つまり1秒間に1回にすると、水滴は止まってみえます。

図でいうと、次のタイミング(t=2)では、水滴は一つ下の位置に降りている(灰色の矢印)のに、あたかもオレンジの矢印の対応関係のように止まって見えます。
 
フラッシュを、例えば、0.9秒に1回のタイミングで光らせるとします。
すると今度は、さっきよりも早く光るため、さっきの位置より少し上で水滴が見えます。それでも、水滴は下に降りている(灰色の矢印)のですが、あたかもオレンジの矢印のように移動して見え、つまり、水滴が上昇しているように見えます。

逆に1.1秒間に1回光をつけたら、(自然落下よりも)ゆっくり下に落ちていくように見えます。
 

ウォーターパールのポイント

ウォーターパールのポイントとしては「対象となる動き」とは別に「観測する動き」の二つの動きがあり、かつ、どちらも周波数(あるいはタイミング)により動きが規定されている、ということです。もう少し具体的にいうと、スピーカー経由で振動を与えた水の動きが対象となる動きで、これをマルチストロボで飛び飛びに(つまりある周波数で)見るのが観測です。例えば、パラパラマンガは最初から「対象となる動き」しかないのに比べ、「観測する動き」が追加されている分、現象としては複雑です。パラパラマンガは、最初から意図したものが飛び飛びに用意することで、なめらかに動いているように見えるわけですが、ウォーターパールはもともと連続的に落ちているものを、わざと飛び飛びで観測し、さらに、この観測するタイミングを変えることで、見え方が変化するというものです。
 
このことをパラパラマンガに似ている玩具「トゥィンクルピクト」で見てみましょう。この玩具は、犬やイルカ、蝶々のような動物の形が円盤の上に、少しずつ動きを変えて配置されています。

パラパラマンガのような感じです。スイッチを押すと円盤が回るのですが、これだけだと、高速すぎて、パラパラマンガのような動きは見えません。これが、アニメのように動きが見えるポイントは、上部にあるライト(光)です。このライトは点滅することで、(ほぼ)連続的に見える対象の動きをサンプリングして、離散的にしてくれます。これによりパラパラマンガのページと同様、異なる動きがうまく取りだされ、アニメのように見えます。
 
「観測する」ということを分かりやすくするため、暗い部屋で光をつけていましたが、実は動画のカメラでも代用できます。動画のカメラは1秒間に(例えば)30枚のフレームに分けて撮影しています。つまり、飛び飛びのタイミングで観測しているわけです。なので、スピーカーのタイミングをこれにあわせる、つまり、周波数30Hzにすると、動画カメラで見た水滴は止まって見えます。今度は観測する側のタイミングは変えられないので、スピーカー側の周波数を大きくしたり小さくすることで、動画の水滴が上下に移動します。上のYouTubeの動画はそのような仕組みでウォーターパールが実現しています。
 

様々な動画:立体型から上昇・下降の同時アニメまで

今回、調べている時に見つけた他の動画も紹介します。こちらの動画は3分あたりからがウォーターパールですが、スピーカーとホースの接続の仕方が絶妙ですね。こちらも、水滴ではなく水流で、また、動画カメラによる再現をしています。


こちらの動画では、ペットボトルの後にマッサージ器をくっつけて振動を与えています。ホースの水じゃなくてもよいわけですね。また、暗くして光で観測しています。

トゥィンクルピクトはパラパラマンガに似ていると書きましたが、より直接的にパラパラマンガを立体的にしたものはゾートロープと呼ばれます。こちらに動画をつけておきます。

ターンテーブルのようなものに人形を、少しずつ動きをずらして置けば、三次元的なアニメができます。実際にそれを実現しているものがありました。

これは、さきほどのゾートロープの動画と違い、見るスリットがないため、そのままではアニメのように見えません。トゥインクルピクトでフラッシュがないような状態です。
これに光をあてることでアニメのように見せているようです。

さらに、光のタイミングをいろいろ変えれば、動きのタイミングを変えたり、さらには逆方向に動くようにも見えます。
マルチストロボのメーカーのページに、ゾートロープに加えてストロボの光を使うことで、単なるアニメでなく、幻想的な動きを実現している動画がありました。
 
高速で点滅する光をあてるためにマルチストロボ(ストロボスコープ)を使っていますが、これは結構高価です。ただ、これが二台あると、別々の周波数にするとことで、同時に(!?)、上下に移動する水滴を見ることができます。この現象は何度も再現していますが、分かりやすく見えるように撮影した動画がありません。2台のマルチストロボにカラーフィルムをかけて、光をあてています。どっちが上にいっているのか分かりづらいですが、雰囲気はこんな感じです。将来的にうまく取れたら動画のファイルは置換えます。